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Twilight

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ルークと薬と収穫祭(ガイ・ジェイド・ピオニー編)


「さすがにガイもいるんだし、無茶苦茶にからかわれるってこともないかな・・・?」
(ガイ・ジェイド・ピオニー編)
 

 
今回の仮装パーティーを企画したピオニー皇帝陛下はというと、自分もちゃっかりと悪魔というよりは魔王の様な衣装を着こんで、ブウサギに囲まれながら自分の私室で悠々とくつろいでいた。両脇には呆れた様子のジェイドと苦笑いをするガイが控えている。
「さぁて、かわいい子犬のルークはまだかな~?なぁ、ルーク~w」
ぶひ!と皇帝の膝に抱えられたブウサギルークが反応を返す。本物のルークを抱っこすると彼の自称保護者と怒り狂った兄に咎められるため、渋々ブウサギのルークで我慢することにしたようだ。
「今頃は各部屋を回っている頃でしょうから、そろそろだと思いますよ~」
「ルーク。一人で大丈夫かな・・・」
 やっぱり俺も一緒に回るべきだっただろうか?と先ほどから同じことばかり繰り返す過保護なガイに、ジェイドは呆れたようにため息をついた。
「心配せずとも、私の部下を何人か護衛に付けていますから大丈夫ですよ。もちろん彼に気付かれぬように背後からこっそりと、ね」
 その部下達、実はジェイドの部下の中でも精鋭部隊だったりするのだが。なんだかんだいいつつも結局ジェイドもルークには甘いのであった。
 コンコンコン・・・
 そんな中、私室のドアが遠慮がちにノックされた。どうやら陛下お待ちかねのかわいい子犬が来たようだ。
「と、とりっくおあとりーと・・・」
 ゆっくりと開かれたドアの隙間から、ひょこりと朱い短髪と耳が覗き、続いて恐る恐るといったように見上げてくる翡翠の目が室内を見渡し、そう呟いた。昼間の一件でルークは皇帝陛下への警戒を強めてしまったらしい。実はそのおどおどした様子がさらに皇帝陛下を喜ばせるということには残念ながらルークは気付けなかった。
「おお!ルークか。待ちかねたぞ~!!」
そう言ってずかずかと大股に近寄ってくる皇帝の大仰な反応に、びくっと肩を震わせたルークはしたたたと保護者の青年に走り寄り、その陰に隠れてしまう。
「る、ルーク?どうしたんだ」
ガイが苦笑して屈みこみ怯えるルークを抱き上げると、ルークはそのままガイの首に腕をまわしてしがみついてしまう。ガイの肩口からちらちらと皇帝の様子をうかがう姿は、怯えた子犬そのものだった。
「陛下。いたずらしにきた子供を逆に怖がらせてどうしますか。今のルークは姿だけでなく精神も完全に子供なのですから」
「おどかしたつもりはなかったんだがな~。すまんなルーク。ほらこっちへ来い」
 ジェイドの苦言をさして気にした様子もなく、ピオニーはガイの腕の中から子供を奪い取った。そのまま自分の腕の中に納めて満足そうに微笑むと、腕の中で固まっているルークにおびえさせないように優しく語りかけた。
「そんなに怯えるなルーク。別にいじめるつもりはないんだ」
 そう言ってルークを宥めると、隣の部屋に控えているメイド達に準備をするようにと伝えた。間もなく、部屋に色とりどりのケーキやクッキー、飴やチョコレートなどが所狭しと乗せたカートを押したメイド達が入ってきた。その量に、自他共に過保護と認めるガイも驚きの表情を顕わにした。ジェイドも眼鏡に手をやりながら「やれやれ」と苦笑している。一方のルークはというと、皇帝の腕の中にいるということも忘れてその大きな翡翠の目を輝かせていた。
「さぁ、ルーク!ジェイドから話を聞いて、お前のために城お抱えのパティシエ達に急いで用意させたんだ。好きなものを食っていいぞ~♪」
「ほんとに!?」
「あぁ。今日は収穫祭だからな。ここにあるのはみ~んなお前のものだ」
「ありがとう陛下!大好き!!」
 と、常ならば絶対聞けないルークからの大好き発言に大人3人は固まった。ガイに至っては「るぅくぅうううう?!」とあり得ないという表情を浮かべて凍りついてしまっている。当の爆弾発言をしたルークは、気に入ったケーキとチョコレート、クッキーをメイドに皿に盛り付けてもらい、手近なソファにちょこんと腰をおろして幸せそうに頬張っていた。口の端に生クリームをつけながら無心にケーキを口に運び続けるルークは、さながら小動物の様で。目の前のケーキに気を取られているルークは背後に皇帝が近寄ったことにも気づいていない様子だった。
「・・・ルーク!やっぱりお前うちの子にならないかっ!!?」
 背後から鼻息も荒く羽交い絞めにした皇帝の腕の中で、それを気にした様子もなくチョコレートを咀嚼するルーク。そんなルークとは対照的に過敏に反応したのは、先ほどの爆弾発言から素早く立ち直り、傍に控えてべたべたになったルークの口の周りを甲斐甲斐しく拭いてやっていたガイだった。
「何言ってるんですか陛下!ルークはうちの子です!!小さいころから手塩にかけて育ててきた可愛い我が子を30代独身皇帝なんかに渡せるもんですか!!!」
「ガイラルディア、お前不敬罪だぞ?!というか、ルークはお前んちじゃなくてファブレ家の子供だろう」
「今日は無礼講です。というか、陛下はちゃんと国やお世継ぎ問題のためにもさっさと身を固めてください!!」
 皇后候補選びの役人の人達が泣いてましたよ?!といって、皇帝の腕の中からルークを取り返すガイに対し、ピオニーは顔をしかめた。今まさに自身の身の上話が頭上で繰り広げられているルーク本人は、ガイの脇でソファに座りなおし、大人しく今度はクッキーを齧っている。
「あいつらは俺の好みを理解してないんだ!というかお前、なんか最近ジェイドに似てきたぞ?」
「似てません!!」
 どうでもいい話で白熱する自国の皇帝とその護衛の伯爵を見守っていたジェイドは「はぁぁ・・・」と大仰にため息をつくとルークに手招きをした。ルークは小首をかしげると大人しくジェイドの脇まで走り寄り、その隣にちょこんと腰かけて、彼から差し出された紅茶のカップを受け取った。「ありがとジェイド」と言って笑みを浮かべて紅茶をこくこくと飲む小さなルークを見つめるネクロマンサーの目は、噂とは違いとても優しかったと後日メイドの間で話題になったとかならなかったとか。ルークがいなくなったことに気付いた皇帝と伯爵は話をやめてジェイドを恨めしそうに見るが、お菓子に夢中なお子様ルークの隣でイイ笑顔で優雅にコーヒーを嗜むネクロマンサーに意見できるものがこの世界に存在するはずがない。
 結局。その後ルークがお菓子に満足して皇帝の部屋から退室するまで、ルークはジェイドの傍を離れなかった。そのため、今回はジェイドの一人勝ち?という結果に終わったという。



追記:多分一番安全なのはジェイドの隣なんじゃないかな~と思います。
    ただし、妙な実験道具や薬を所持している時以外ですが(笑) 
 
 
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