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Twilight

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帰還1

ED後捏造話です。独自設定が多いですが、それでもOKな方はどうぞお読みください。





思い返せば、彼との出会いも、すべての始まりもこの場所からだったと思う。
 
 
「どうして、ここに・・・?」
ティアは震えながら目の前に静かに立つ赤毛の青年に問いかけた。月の逆光と彼の長い前髪に隠れているせいで青年の顔はよく見えず、ルークなのかそれともアッシュなのか判別がしづらい。青年はふと柔らかく笑って視線をはるか後方に見えるエルドラントの残骸に投げた。
「ここからなら、ホドを見渡せる」
それに、と続けて青年はティアと仲間たちの方に振り返った。
「約束してたからな・・・」
そう答えた青年の顔を見て、ティアの目から涙があふれ出した。その一瞬で気づいてしまったのだ。その青年が、2年間自分が待ち続けた「彼」ではないことに。それでもティアはやさしく微笑んだ。
「お帰りなさい。・・・アッシュ」
 発したその言葉は自分でも驚くほどに冷静だった。後ろに控えていたかつての旅の仲間たちは、驚いたように、それでも嬉しそうに二人に歩み寄ってきた。
「アッシュ、よくぞご無事で!」
 ナタリアはアッシュに駆け寄りひしと抱擁を交わした。
「おかえり、アッシュ。よく戻ってきたな」
 ガイはアッシュの肩を軽く叩いて歓迎の意を露にした。アッシュも黙ってそれに頷いた。
「アッシュもナタリアも相変わらずお熱いことで~♪」
「まぁ、アニスったら。そんな言い方されると恥ずかしいですわ///」
 照れるナタリアをアニスはからかい、アッシュもまた顔を赤くした。
 と、そこでガイがアッシュに近づき真剣な表情で尋ねた。
「アッシュ、ルークは一緒じゃないのか?」
 和やかなムードは一転して皆真剣な面持ちになった。ティアも他の仲間達も静かに次の言葉を待っているようで、皆ルークの消息について知りたがっているようだった。そんな仲間達に対し、アッシュは首を横に振って見せた。
「いや」
 アッシュのその一言で仲間達の表情が落胆の色に染まる。予想していた反応だったためアッシュは顔をしかめる。しかしそんな雰囲気の中ジェイドだけは離れた位置で黙って彼らを見つめていた。アッシュがそれに気づきゆっくりとジェイドに近づく。
「あんたは何も言わないのか?」
ジェイドは一瞬眼鏡を押さえるそぶりをした後、常の食えない笑みをその顔に張り付けて言った。
「いえ、少し考え事をしていました。おかえりなさい、アッシュ」
そう言って「2~3確認したいことがあるのですが、よろしいですか?」と続けた。
「アッシュ。あなたはルークの、レプリカルークの記憶を持っていますか?」
「どういう事だ、旦那?」
 ガイがルークの名前に即座に反応した。ジェイドは、説明係は御免なのですがね~、やれやれ、とでも言うように肩をすくめた後、話し出した。
「完全同位体のレプリカとオリジナルの間にはビックバンという現象が起こります。これは、オリジナルの死後、オリジナルのフォニム情報がレプリカ側に流れ込み、レプリカにオリジナルの情報が上書きされた上でレプリカの体を利用してオリジナルが生き返るという現象です」
 初めて聞く完全同位体のオリジナルとレプリカの末路に、ティアは口元を押さえて驚いた。ルークはこの事を知っていたのだろうか?仲間達も同様の事を思ったらしく驚いた表情をしている。
「レプリカの体で再生したオリジナルは、それまでのレプリカの記憶も保持した状態で再生すると理論で証明されていますが・・・」
「それじゃ、ルークは・・・」
 ティアは辛そうに俯いた。こぼれそうになる涙をこらえながら黙ってジェイドの言葉を待っている。傍にいるガイやアニス、ナタリアも沈痛な面持ちだ。ジェイドはゆっくりとアッシュに探るような目を向けた。
「アッシュ、あなたの中にルークの記憶はありますか?」
 そうもう一度ジェイドが尋ねた。
ああ、これで本当に彼は居なくなってしまったのだと、ティアは半ば諦めの心境でアッシュの返答を待っていると、ティアの予想に反してアッシュは首を横に振った。
「いや、俺の中にはルークの記憶はない」
 それを聞いた仲間たちの表情は困惑している。ティアも同様に混乱していた。ジェイドはレプリカの記憶はオリジナルのアッシュが持っているはずだと言ったのに、アッシュはルークの記憶を持っていない・・・?
「ふむ。完全同位体の理論とは若干違った結果になっているようですね・・・」
「そのレプリカの件で、ローレライから伝言を預かっている」
「伝言?ローレライは一体なんて?!」
ティアはじかれたように顔をあげてアッシュに詰め寄った。もしかしたら、そう思うといてもたってもいられなくなったからだ。アッシュはティアを一瞥するとまた話し出した。
「ローレライが言うには、死後体が残っていたオリジナルの俺とは違い、ルークの体は一度ローレライを開放した際に完全に乖離してしまったらしい。体が残っていれば俺の様に肉体を回復るだけで済んだようだがな。本来なら、そのままセブンスフォニムの欠片となってローレライに吸収されるところだが、解放してもらった恩もあるとかで、ローレライは奴を構成していたフォニムを再び集めて再構築しようとした」
 ふむ。とジェイドは眼鏡に手を当てて話の続きを促した。
「だが、一度は完全に乖離してしまった全てのフォニムを再び集めるのはローレライにも難しかったらしい。ルークの核とも言える部分は回収・再構築する事ができたが、肝心の核の器となる肉体を構成するフォニムが足りないことに気づいた・・・」
「つまり、ルークの核はまだ消えずに残っている、そういうことですね?」
「そうだ。奴の核はフォニムに変換して、今このローレライの鍵の中に封じてある。肉体を再構築する時にはローレライも力をまた貸すと言っていた」
 そう言ってアッシュは腰に差していた鍵をジェイドの前に差し出した。よく見るとうっすらと鍵の刀身が発光しているのが分かる。ジェイドは鍵をアッシュから受け取るとしばし鍵を観察し、笑みを浮かべた。
「つまり、ルークの体を再構築する上で足りないフォニムを何らかの方法で補い、鍵の核と共に再構築すればいいというわけですね?」
 アッシュはそうだ、と頷く。
「てことはぁ、・・・ルークは助かるんですか大佐ぁ!?」
「ええそのようですよ、アニス♪」
「まぁ。それは本当ですのジェイド?よかったですわね、ティア!」
「ええ!」
ティアは静かに頷いた。これで彼ともう一度会えるかもしれない。そう思うと、今まで沈んでいた気分が上向きになった。
「そうと分かれば早速行動だな!旦那、これからどうするんだ?」
 ガイの言葉に、ジェイドはまずは、と考えるそぶりをした。
「ルークの体を構成するフォニムを集めるために、レムの塔へ向かいましょう。あそこには瘴気中和の名残でまだ第七音素が大量にありますし、上空にある音譜帯にも最も近い場所ですからローレライも呼び出しやすいはずです」
「だが眼鏡。あそこにはフォミクリーはないぞ。体を再構築する時には何を使うんだ?」
アッシュの疑問は当然といえば当然だった。レプリカを作成するにはフォミクリーが必要だ。レムの塔にはレプリカ関係の施設は存在しない。
「ご心配なく。フォミクリーがなくともレプリカは作成できますよ。譜術を応用して構築を行うのです。もともとフォミクリーは私が生み出した譜術を元に、ディストが譜業でその技術を再現したものですからね」
 さぁ、みなさん行きますよ~♪というジェイドの号令でティア達は近くに待たせてあったアルビオールへと乗り込んだ。目指すはレムの塔。2年間絶望の淵に立たされ続けていたティアにとってようやく希望の光が見えた気がした。
 
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