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Twilight

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アビスキャラ in MH2G・4

※この話は、アビスキャラ in MH2G・3 の続きです。



 
 チュンチュンチュン・・・
 朝の清々しい冷えた空気が部屋をつつみ、明るい日差しが薄暗い部屋の中を照らしだした。部屋に隣接する食堂からは朝食の食欲をそそるいい匂いが漂ってくる。その匂いを嗅いだことで無意識に鳴りだした腹の虫に起こされる形で、ルークはゆっくりと目を覚ました。ぼやけた視界にまず移ったのは、窓から見える青い空だった。次いで室内に目をやると、小奇麗に片づけられた部屋が目に入った。ヴァン師匠の部屋によく似た作りだが、しかしどこか様子がおかしい。今いる部屋の四方の壁にかけられた防寒用の毛織物のタペストリーは透き通った海の様なブルーで、師匠の家にあったのは森の新緑をイメージさせるグリーンだったからだ。
「ここ、どこだ・・・?」
自分が今座っているのはふかふかの温かい大きなベッドの上だ。師匠は自分をベッドに寝せるようなことはしなかった。やはりおかしい。ルークが頭を抱えて考え込んでいると。
「ここは雪山の麓にあるマルクト村だよ」
不意に隣室から短く刈った金髪を逆立てた長身の青年が現れた。タペストリーと同じ、透き通った海の色をした優しげな双眸がこちらを捉える。思わず警戒して、手にしていた毛布を体の前で握りしめると。
「ようやっとお目覚めか。ここに着いてからというものの2日間も眠ったままだったから心配してたんだよ。体の調子はどうだ?・・・っとそんなに警戒しないでくれよ」
 青年は苦笑気味に言うと、こちらにゆっくりと近寄り、ベッドの端に腰かけた。
「俺はガイ。ガイラルディア・ガラン・ガルディオスっていうんだ」
「が、がいらる・・・?」
「ガイでいいよ。君の名前は?」
「ルーク」
 人好きのする優しい笑顔で話しかけられて、ルークはついつい答えてしまった。目の前の人物がまだ信用できるかどうかもわからないのに、迂闊だったとは思うが、どうもこの青年は自分の警戒心を削ぐようで。
「ルーク、か。いい名前だな。それで、ルークはどうしてあんな雪山にいたんだ?」
「雪山?・・・・・・っ!そうだ!ヴァン師匠!!」
 ルークは唐突に立ち上がった。が、ベッドのスプリングの反動でよろけてしまい、慌てて差し出されたガイの手に掴まった。
「あ、ありが、とう・・・」
「どういたしまして。それにしても、今ヴァンって言ったか?ダアト村の??」
「師匠を知ってるのか?!」
「ん?あ、あぁ。昔馴染みでな。小さいころはヴァンもマルクト村に住んでいたから、よく遊んでもらっていたんだ」
「そっか」
「もしかして、雪山にいたのとヴァンと、何か関係があるのか?」
「え。・・・あの。それは・・・・」
 ルークが言い淀むのと同時に、ぐぅぅぅっと腹の音が室内に響く。顔を赤らめて俯いたルークを見て、ガイは快活に笑った。
「まぁ、腹が減っては戦は出来ぬ、って言うしな!難しい話は朝飯食ってからにするか。うちの飯はうまいぞ~?」
 そう言ってガイはベッドから立ち上がると、隣室への扉をくぐってこちらを手招いた。ルークもそのいい匂いにつられて、食堂へと足を運んだのだった。
 
 
 朝食を取ってから1時間後、ガイとルークはマルクト村の村長室にいた。あらかた今までの経緯を話し終わり、今は大きな机を挟んで向こう側に、椅子にどかりと腰をおろしてリラックスした様子の村長のピオニーと、その横で姿勢正しく直立した補佐のジェイドがこちらを興味深げに観察していた。どうも居心地が悪いとルークが身じろぎしていると。
「では、ルーク。あなたはダアト村所属のギルド長・ヴァンのお供アイルーであり、雪山にいたのはヴァンを待っていたからだと言うのですね?」
 話を静かに聞いていたジェイドが、確認のために問いかけてきた。光る眼鏡に遮られて、その表情は伺えない。
「そうだ。あの峠の先にある洞窟で、大物をしとめるための罠の準備をしておくから、そこで待ってろって言われて。すぐ戻るって言ってたのに師匠戻って来なくて・・・」
 話している内に段々と心細くなってきたのか、次第に声が小さくなっていく。その様子を気遣ってか、ピオニーは努めて明るく、励ますように声をかけた。
「ふむ。事情は分かった。俺の方からダアト村に問い合わせてみよう。その間は、そうだな。しばらくガイの家で世話になってはどうだ?」
「え?俺の家ですか?!」
「ルークも懐いているようだしな。ガイラルディアもどうせこの後アイルーを雇う予定なんだから、今のうちに慣れとくチャンスだろ。どうだ、ルーク?」
「お、俺は別に・・・。ガイがいいと言うのであればそれで構いません」
「だそうですよ?ガイ、責任持って面倒見てあげてくださいね♪」
「ハイハイ。分かりましたよ、まったく」
「ガイ、いいのか?」
 不安げに見上げてくるルークに、ガイは笑顔を向けた。
「今陛下が言った通り、今俺の家はアイルーが不足しててな。ルークが来てくれると助かるんだが」
「おう!俺がんばるから。ガイ、よろしくな!!」
「こちらこそ、これからしばらくよろしくな、ルーク」
 頭をぐりぐりと撫でてやると嬉しそうに目を細めて喉を鳴らすルークを見て、ピオニーが恨めしそうな声を上げた。
「いいな。あんな可愛いやつ俺も欲しい!!」
「陛下にはもうネフリーとあの馬鹿がいるでしょう?物ではないんですから・・・」
「チッ。可愛くない奴め」
「何か言いましたか、陛下?」
「別に?」
「あ、陛下。それでは、俺はここで失礼します。狩りの報告もありますので。また後日伺います」
「おう。気をつけて帰れよ!ルークもがんばってな」
「はい!お世話になりました」
「また何か分かり次第、私の方からガイへ連絡します。ルーク、分からないことがあればいつでもここを訪ねて来てください」
「うん、わかった。それじゃあ!」
 礼をとって退室したガイに続き、慌ててルークも礼をとると部屋を出て行った。その背を見送った後、不意に真顔に戻ったピオニーに、ジェイドが懐から取り出した資料を手に話し出した。
「3日前の夜ルークが運び込まれた際に調べたのですが、ルークは確かにこの辺には生息していない種のアイルーですね。この辺りの者は皆私の様な金毛や白毛など色素の薄いものが多いですから。ルークがもつ赤毛はダアト村近隣にある火山地帯の付近でよく見受けられるものです」
「ふむ。ルークは嘘は付いていないようだな。それで、先方には確認したんだろう?」
「ええ。それが・・・」
 言い淀んだジェイドから手渡された手紙を読むとピオニーは眉を寄せた。
「何々?『当方には確かに赤毛のアイルーがおりますが、ルークなるアイルーについては存じ上げません。そのアイルーの勘違いではないかと思われますが』・・・か。ルークの話とは食い違うな」
「ええ。ルークが嘘を付いているとは思えませんが、しばらく様子を見た方がいいでしょうね」
「そのようだな。よし、ジェイド。お前にルークの監督官を命じる。しばらくルークと共に行動し、その様子を観察して報告するように」
「御意に。・・・しかし、それではお供はどうするのですか?」
「んあ?それならサフィールをしばらく代わりに補佐に付けるから安心しろ」
「あの鼻垂れに務まりますかねぇ?」
「そう言ってやるなよ。あれでもあいつもやれば出来る奴なんだから。んじゃ、頼むぞ!」
「気が進みませんね~」
 ジェイドはそう言うと礼をとり、静かに村長室を後にした。向かうのはルークがこれから暮らすことになる、村はずれのガイの家だ。
「やれやれ。私が先生ですか。弟子は取らない主義なんですけどね~」
 そう言いながら苦笑して、ガイ宅へと続く坂道を登って行ったのだった。


「ペール、これでいいのか?」
 ガイの寝室で白いドングリメイルを脱いで床に置き、代わりに白のふわふわとした毛織物のマフモフスーツを着こんだルークが、クルリとその場で回って見せる。コートの裾がふわりとルークの動きに合わせて舞った。
「ほぅ、サイズがぴったり合いましたな。これは良かった」
 はしゃぐルークの隣に立っているのは白髪禿頭で、老眼鏡をかけたアイルー。名はペールと言って、ガイの先代の頃からガルディオス家に仕えている古参のアイルーだ。当時は先代のお供として狩りに冒険にと活躍していたそうだが、今は歳のこともあり、家でガイの食事や身の回りの世話をしている。纏う雰囲気は穏やかで優しげで、ルークを見る眼差しはさながら孫を見守る祖父の様だった。
「うん。使いこまれてあって動きやすいし。ペール、助かったよ」
「いえいえ。昔わしがお供をしていた時に使っていた装備なのですが、ルーク様も気に入っていただけたならうれしゅうございます」
「その様って言うのやめてくれないか?確かに昨日まではお客だったかもだけど、これからはしばらく同僚になるんだし。敬語もいらないよ」
「左様ですか?では、ルークと呼ばせていただきましょう。敬語は長年で染み付いてしまったものなのでご勘怒いただけるとうれしいですな」
「分かった。これからよろしくな!」
「ええ。よろしくお願いします、ルーク」
 一通り挨拶が終わったところで、隣室からガイがやってきた。ルークの姿を見るとにこっと微笑んだ。
「へ~。よく似合ってるじゃないか!」
「そ、そうか?じゃなかった、・・・そうですか、ガイ様?」
「敬語はいらないよ。あまり人に尽くされるのって慣れてないんだ。今まで通りでいいよ。ついでに様もいらないからな?」
「う、うん・・・」
「ルークにはこれからしばらく俺のお供として、一緒に狩りに出てもらうことになった。手続きはもう済んでるし、これから今日の分の依頼があるから、今日からよろしくな、ルーク。それと、ペールもよろしくしてやってくれ」
「おう!」
「かしこまりました。・・・それにしても、ガイラルディア様がようやっとお供を雇う気になってくださってペールは安心いたしました。私も歳ですからもう旦那様の時の様にお供について行くことも出来ませんし・・・」
「随分心配かけてたようだな、すまないペール」
「いえいえ。では、わしは今日の夕飯の支度でも始めます。ガイラルディア様、それにルークも。気をつけていってらっしゃいませ」
 ぺこりとお辞儀をするとペールは食堂へと消えていった。その背を見送ると、自分の装備を確認して、ガイはルークを見下ろした。
「んじゃあ、今日は生肉の納品依頼があるからな。簡単な仕事だと思って油断するなよ、ルーク?」
「分かった!」
「よし、行くか!」
 脇に立てかけてあった細身の太刀を手に取ると、ガイは家の外へと出て行った。ルークも武器を手に取り、ペールからもらった防寒用のゴーグル付きの猫耳帽子を深くかぶり直すと、ガイを追いかけて飛び跳ねるように部屋を後にした。
 
 

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